あなたから、kiss
「先輩、……せーんぱいっ!」
「えっ…?」
私を呼ぶ声に……、ハッと我に返る。
「春雨スープ…、汁吸ってますよ?」
「……タカちゃん。おかえりー。」
「………えっと。1時間前くらいには戻ってましたけど?」
「………!」
「ボーッとしながらパソコン打ってましたよね、心ここに在らずって感じでしたけど…、それでも仕事出来るって凄い。ある意味尊敬します。」
「……………。」
「恋煩いですかー?」
「違っ…」
慌てて弁解しようとしたその時……。
オフィスの自動ドアが、音を立てて…開いた。
「おはようございます。」
やって来たのは……雨宮くん。
思わず顔を背けた私に、
「先輩?どーしたんですか?」
タカちゃんは不思議そうに声を上げた。
雨宮くんが、他の男性社員と話す声を…耳が嫌でも拾ってしまう。
「おはようってか…、もう昼だし!」
「……。コンニチハ。」
「それも可笑しいな。てか、忘れ物でもした?シフト表休みになってるけど。」
「……?シフト表?」
「今日から貼り出されてんだよ。」
「……………。」
「ああ、それなら。花が貼っとけってしつこく言うから…」
「……編集長!!」
私は、声を荒げて…立ち上がる。
驚いた社員達の視線が――…
一気にこちらへと集中した。
なのに―…、だ。
「おはようございます。」
普段のポーカーフェイスを保ったまま…。
彼は私に向かって、さらりと挨拶するのみに…留まった。
さて。
本当に…来てしまった。
どうする…、私。