あなたから、kiss
二人でこうして向き合うのは……初めてだった。
女子社員から、羨望の眼差しで見られていたけれど…気にしないようにした。
「男性社員の視線が痛いッス。」
「……何で?」
「いえ、別に気にしないからいいです。」
雨宮くんもまた、同じようなことを…言っていたのが。
少しだけ…くすぐったかった。
昨日のことは…聞けなかった。
聞くのが野暮な気さえしていた。
酔っぱらいが抱いた幻想でいい。
流れるこの、優しい時間を――…
壊したくなかったから…。
彼が綴る言葉を…
唇をじっと見つめながら聞いていた。
この、整った唇に…キスされたかもしれないだなんて。
思い違いだと……言い聞かせた。