あなたから、kiss
夜になると。
周囲の空気が…ピリピリとしてくる。
疲れていても…上がれない現状。
明日の朝には…屍になった自分達が、容易に想像できる。
「夕飯買い出し行きますけど、何かリクエストはありますか?」
空気を悟った雨宮くんが、ジャケットを片手に立ち上がると……。
一斉に、リクエストの声が挙がった。
それはそれは、遠慮がないくらいに……。
「雨宮、お前…、今日は休みだったろ?そろそろ上がれ。」
見かねた編集長が、珍しく助け船を出したけれど…。
「これも勉強です。」って、スパッと言い切った。
何処までも…貪欲だ。
「雨宮くん、コレ…使って。」
私は、メモ帳とペンを彼に差し出す。
「大丈夫です、いらないっス。」
「……覚えられるの?」
「ん。歩くメモ帳つれ歩くんで。」
「………?」
「編集長!今度は俺が花さん借りてってもいいですか?」
………は?!
編集長は、返事をする代わりに…、手をひらつかせた。
「……ちょっ…、勝手に…」
「花さんも、言ったでしょう?俺を貸してって。」
へ、編集長~~!!
教えたのね?!
私は編集長を睨み付けるけど、彼はそ知らぬ顔して…知らんぷりを決め込んでいる。
「……貸し借りして…、コレでチャラ。青筋立ってるから少しクールダウンしに行きましょう。」