あなたから、kiss


シトシトと、降り注ぐ雨の音が……


二人を包む。





「………私に、何か……しなかった?」









「………気になるなら。確かめて…みましょうか?」


「……え……?」














雨宮くんの冷たくなった手が……


私の手を掴んだ。





「花さんの手を温めたのは、この手ですか?」


骨ばった…大きな手。




持っていたレジ袋が…ドサリと、地面に落ちた。






その、大きな手が…私の横髪を掬って。


耳へと…掛ける。





「………。花さん、コレは…夢じゃないんです。止めないと…続きをしますよ。」


「……続きが…あるの?」


「あります。多分、花さんが一番知りたいことじゃないですか?」


「……………。」




「……雨に濡れて、モテ唇になってます。」


「………?」


「俺は、花さんだったら…例えヨダレ垂らしたかさかさの唇でも、誘惑されますけどね。」





雨宮くんは、私の頬に触れて……


それから、ゆっくりと…顔を近づけて来る。





意地悪な言葉とは裏腹に、そっと、触れるだけの………優しいキス。





目を閉じることも…忘れていた。



視界に飛び込んで来た…秋桜の花。






そう――…、


この、降り注ぐ雨が…

凛と咲く花に、水を与えるように。





そっと―…。


















残された余韻は……、今朝のものと…同じだった。






「そろそろ…戻りましょうか。」


彼は私と目を合わせぬまま、落としたレジ袋を持ち上げると……。


雨の中に戻っていった。





「雨宮くん。」


彼の背中に…掛けた声は。




無情にも…雨音にかきけされていった。





























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