あなたから、kiss


仕方なく、肩を並べて…街を歩く。


ショーウィンドーに映し出される二人の姿のアンバランスさに…

少し気後れした。


ビシッと…ジャケットを着た私と。

ラフな格好の彼と。




ハタから見たら、どう見ても…会社の上司と、部下って所だろう。

若しくは、姉弟か……。



「ねえ、社会勉強って言うけど…、雨宮くんは将来出版社希望?」


「いえ、ライター希望です。ゆくゆくはフリーのライターになって、世界を飛び回って見たいッスね。」


「へえー…。」


「大学の教授に相談したら、つてを辿って…この会社に。大手だけど、自分たちで記事も書く編集者も多いからって。」


成る程………。


確かに、社の方針で…下請けの編集プロダクションと共同して、自分達自らも動くことが多い。

プロダクション任せの大手も多い中で、こういったスタイルを貫いているのは…より、ハードにはなるが、その分…寄り添ったリアルな記事を作り出すメリットもある。


「ライターかあ…。知らなかったな。」


「まあ、花さん、俺とロクに口利いてくれなかったですから。」


「…………。」


……確かに…。


「そんくらいが丁度いいんですよ。あれこれ詮索されんの、苦手なんで。」


「女子社員に言い寄られてるもんね?」


「何で知ってるんスか…。面倒なんで、彼女いるってことにしてます。」


「…………。」


ん?

じゃあ……、ホントはいないってこと?



「花さんこそ、男は近づけませんってオーラ出してますけど…、ほんとはいるんでしょ?」


「……は?」


「あれ?違いました?勘はいい方なんですけど…。」


「………。この姿をどう見たら…、そんなこと思えるの…?」


「……………。だって、綺麗だし。」


「……はああ?!」


「前にも言いましたよね。……覚えてないと思いますけど。…あの時は、男性陣が思っていたことを…代表して言ったんです。花さんをよく知る人達は、否定されるのを分かってるから…敢えて表立っては言いませんでしたけど、俺が言えば…角がたたないでしょ?」



「………。」



「まあ、覚えてないのも…無理ないッスね。」



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