お邪魔もののスニーカー【短編】


その赤い靴を思いっきり踏む。ねぇ、何度言ったらわかるの。ここは壁が薄いのよ。女はきっと気付いている。でも知らないふりをする。この赤い靴みたいに。

私は土足で廊下を歩く。土を落とすくらい力強く踏み出す。

リビングについて、靴を脱いだ。

ペンたてからハサミを取り出して、靴紐に刃を差し込む。シャキン、シャキン。ひとつひとつが決別だ。勢いよく、すっぱりと、怨念をこめて。

シャキン、シャキン。何度も切った。

失恋をすれば髪の毛を切る。それとは少し違う。これは置き土産のような、餞別のようなものだ。もしかしたら、将軍の首という表現が一番しゃくに触るが合っていると思う。

転がる糸屑。
警戒な刃先。





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