お邪魔もののスニーカー【短編】
最後に、生花のように一ついけておく。
ハサミをスニーカーにぶっ刺した。
なるほど、これは、なんともまぁ見事なマイハート。
家を出るとき、赤い靴を履いて戻った。
ポストにはちゃんと合鍵を入れておいた。
この忌々しい赤い靴も後でしっかり捨てておこう。
空はわざとらしいくらいよそよそしく降る。どしゃ降り希望だ。精々今日ぐらい悲劇のヒロインを気取らせてくれ。
プルルルルル。
高らかに携帯が奇声をあげる。
私は何度もかかってくるそのコール音に、何度も電源ボタンを押す。
プルルルルル。いい気味だわ。
ほくそ微笑んで、電源を落とした。
家に帰ってからどうしよう。
そうだ。電話線を抜こう。
end