幸せになりたい
「おい、慎?」
龍の声で我に返った俺は、ゆっくりと龍に視線を戻した。
「…………龍」
「…………何だよ」
真面目な顔で俺は龍を見つめる。
龍も、何かを感じとったのか顔が真剣になっていた。
「俺………………
好きなやつできた」
「…………………何だ」
そう言うと、龍はすたすたと前を歩く。
「いや、おい。何だとは何だよ!俺に好きなやつができたんだぞ!?もっと喜べよ!」
「おお、それは良かった良かった。で?どこのどいつ?」
俺は少し下に視線を落とし
「……………知らねぇ。」
それだけ口にした。
「は?知らねぇの?顔は?どんなん?」
「微妙に覚えてる、くらい…………」
龍は頭を抱えて、大きく溜め息をついた。
「し、しかたねぇじゃん!一目惚れだったんだよ!」
俺だって名前知りてぇし、もっとどんなやつなのかとか知りてぇよ。