魔王の息子で何が悪い!
彼女の周囲ではまるでそこだけ重力が反転したかのように大空に向かって砂塵が舞い始める。
そして、先程まで淡いピンク色であった髪は徐々に赤みを増し、虚ろであったワインレッドの瞳には力強い意志が灯った。

対峙するナオトを襲うのは彼が生まれてからこれまでに経験した事のない絶対的な圧力《プレッシャー》。
頭の中では先程から激しく警笛が鳴り響いている。

これは夢だと思いながらもナオトの額から冷たい汗がスゥっと零れ落ちた。

……いや。彼にももうわかっていた。
これが夢ではなく現実である事を……

「ちょ!ちょっと待て!やめてくれ!」

堪らず悲鳴をあげるナオト。しかし、その声はもう彼女には届かない。

リリムが右手を高々と持ち上げると、それに呼応するかのように漆黒の光が彼女の掌に集まり始める。

そして、それを中心に地鳴りのように不気味な振動音が徐々に大きさを増していった。

もう駄目だ!やられる!
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