天体観測の夜は月に願いを… 

先輩は少し震える私の顔を両手で挟み上を向かせると

ゆっくりと近づいて唇を重ねた。優しく触れるだけのキス。


祈織「目、閉じて」


そう促すと、再び降りてくる。

今度はチュッとリップ音をさせ何度も何度もついばむ様に。

まだ誰も触れた事のない唇は固く結ばれ、閉じられた目蓋を

縁取る長いまつげはフルフルと震えている。

大好きな人とファーストキス。

思考回路はとうの昔に停止している。

何もわからない。


美咲「・・んっ、ん。・・・せっ、先輩、息、出来ない。」


驚いたように先輩は体を話した。


美咲「わ、わたし初めてで、どうしたらいいか…」


先輩は指でそっと唇を撫でると。


祈織「いいんだ。初めてが僕でうれしい。
   僕も緊張してた。
   でも、君があんまり可愛すぎるから
   つい欲張りそうになった。」


彼は私が落ち着くまで抱きしめてくれた。

一見痩せて見える彼の腕の中は、がっしりとして広く温かだった。
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