天体観測の夜は月に願いを…
戸塚「………」
戸塚は私から手を離し、柵に背中を向け寄っかかった。
美咲「戸塚?…」
戸塚「ん?あぁ、なんでも……良かったな。」
美咲「うん」
戸塚「美咲さあ、何かあったら力になるから、相談しろよ。」
美咲「ありがとう。あのね、戸塚にお願いがあるんでけど…」
戸塚「何?」
言おうか、どうするか、ずっと迷っていたことだ。
戸塚は受け入れてくれるだろうか?唾を飲み込む。
美咲「えっと、昔みたいにね、『誠』って呼んでもいい?」
戸塚「………ああ。」
美咲「『誠』ふふっ、懐かしいね。」
戸塚「………」
本当に昔に戻ったみたいで、胸の奥が暖かかった。
戸塚「そろそろ。計測時間だぞ。戻るか。」
美咲「そうだね。先行ってる。」
戸塚「ああ…。」
私は真っすぐ階段を降りて、そのまま地学室へ向かった。