それでも僕は君を離さない
土曜日の朝

いつものように資材室で棚から棚へ目を走らせ

発注メモを取っていた。

普段は静かだ。

社員がここへ出入りするのは夕方以降が多く

午前中は皆社外へ出払って誰も来なかった。

ところが今朝は違った。

カチャッとドアが開いて閉まる音がした。

私は気にせず

次の棚を上から下までチェックして

欠品もれがないようメモしていた。

「おはよう。」彼だ。

「おはようございます。」私はごく普通に言えた。

「空き箱ない?」

「あります。大きい方ですか?」

「うん。」

私はダンボール箱を1つ彼に手渡した。

「ありがとう。」

「行ってらっしゃい。」

「行ってきます。」

彼のえくぼ付き悩殺スマイルに私はまたドキドキした。

不思議に思った。

彼はなぜ私を好きなのか?

彼のようなイケメンなら女はよりどりみどりなのに。

私のようなチビでガリで理系のカスのどこに興味があるのか

疑問に思った。

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