それでも僕は君を離さない
γ.出現と戸惑い
資材室に新入社員がゾロゾロと入ってきた。

社内巡りの予定はPCのインフォで事前にわかっていた。

全員折り目のついた真新しい白衣を着用し

手にはノートとペンを持ち

ピカピカの傷ひとつないネームホルダーを首から下げていた。

案内役の主任に声をかけられたので

私は作業を中断して並んだ彼らの前に立った。

「資材の樋口さんよ。ここでは何でも彼女に聞きなさい。」

主任はそう言って私を彼らに紹介した。

私は早く作業に戻りたかった。

「では、次へ移動しましょう。」と主任が言った。

それを聞いて私は安堵した。

彼らが長居をしなくて良かったと思った。

先頭に立って資材室を出て行く主任の後ろを

またゾロゾロと彼らは歩いた。

私は最後の一人が出るのを戸口に立って待った。

「奈々。」と小さく呼ばれた。

ハッとした私は片手で口をおおった。

そして目を疑った。

「驚いただろ?じゃな。」

私は最後に出て行った新人の白衣の背中を呆然と見送った。

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