それでも僕は君を離さない
「私には好き嫌いを区別するものがないんです。ただそこにあるものを理解するだけなので、相手が期待するような反応ができなくて物足りないと思われてしまうんです。」

「今まで好きになったヤツはいない?もしくは気になったでもいい。」

「いません。」私は小声で答えた。

「君の情熱はラボにしかないのだろうか。」

透吾さんが言う通り私にとって理系であることはデメリットでしかないと思った。

笹尾先輩は彼自身もそうだったから私とは問題なく過ごせたのかしら?

「奈々、触れていい?」

私は無言でうなずいた。

透吾さんは私の髪に優しく触れた。

「奈々、溶けそうに柔らかすぎてヤバい。」

「透吾さん?」

「ん?」

「そんな風に髪を指ですかれると眠くなっちゃいます。」

「寝るなら僕の腕の中で寝たらいい。」

私が目を覚ましたのは大きなベッドの上だった。

ヘッドボードのデジタル時計を見たら真夜中の0時だった。

「透吾さん?」

「起きた?」

彼はソファに寝転んでいた。

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