それでも僕は君を離さない
「ごめんなさい。寝てしまって。」

透吾さんはたぶん笹尾先輩のことを考えていたのかもしれない

と私は思った。

「奈々。」耳元で声がした。

彼はいつの間にか私のそばにきていた。

正確には私の上におおいかぶさっていた。

「やっと僕を真近で見てくれた。」

そっとキスされた。

「君は僕を見なさすぎる。考えるだけでなくもっと僕を見て。いい?」

「はい。」

さっきよりも長くキスされた。

首筋に彼の唇を感じた。

それはとても熱かった。

喉のくぼみ辺りにキスされて

彼の唇はそこで止まった。

「奈々の匂い、覚えておきたい。」

「私はいつも無味無臭でいたいです。」

「ダメだ。消さないでほしい。他の香りで隠すのもダメだ。」

透吾さんは私のうなじに鼻を近づけてそこにもキスした。

「僕はセックスに関しては過激を追求するタイプではない。君はどう?ゆっくりでも構わない?」

「私はあまり経験ないので何も言えません。」

「はっきり言って悪いが、大学の先輩とは無味乾燥な仲だったと思わざるを得ないな。」

私はゾッとした。

実際にそうだったからだ。

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