それでも僕は君を離さない
δ.それぞれの想い
私たちはしばらく付き合っていた。

「おはよう。」

毎朝透吾さんが資材室に寄るのが日課になってしまった。

私は努めて平静を装い

彼は私のそういう態度に不服なようだ。

「奈々。」

「勤務中です。」

「誰も来ないよ。」

「防犯カメラがあります。」

「だから?」

「社内ですので。」

「わかった。」

「あとでメールします。」

「待ってる。」

透吾さんと私は端から見ると恋人同士だと思われるかもしれないけれど

実際は違い、私には彼への恋心がなかった。

好きでもなく嫌いでもなく

そのことを彼がわかっているのか不明のまま付き合っていた。

私はこの状態が続くとは思えなかった。

このことをいつ彼にメールしようかと悩んでいた。

そして彼を傷つけてしまうことを一番恐れていた。

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