そっと優しく　　抱きしめて
「華井さん、弟の貴弘が何かした？」

「いいえ、何も。」

「そうか、それならいいが、君は僕のことをどう思う？」

「私、野瀬さんのことを想うと胸が苦しくて、好きなのです。ご迷惑かもしれませんが、もう随分前から想い続けていました。」

「君にそう言ってもらえて、こんなに安心できて、照れくさい。僕もずっと君のことを想っていたんだ。」

彼は運転席から身を乗り出して、助手席に座った私にそっとキスしてくれた。

嬉しかった。

だから、今度は私が席から腰を浮かせて、運転席の彼の首に腕を回してキスを返した。

さっきよりもずっと長く、私への想いがたっぷり込められた彼の優しいキスにクラクラした。

「莉花、と呼んでいいかな？」

「はい、野瀬さんの名前は貴明さんですよね？」

私はいつまでも彼の腕の中に抱きしめられていたかった。

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