そっと優しく  抱きしめて
「莉花、帰るぜ?」

「貴弘さん、私のこと、嫌い?」

「嫌いな女にキスするかよ。兄貴にはくれぐれも言うなよ。じゃ、俺は帰るが、三度目はないと思えよ。」

帰り際に俺はまた彼女に軽くキスして部屋を出た。

「カギを閉めろよ、莉花。」

「はい。」カチャリ、と俺が外へ出た後、音がした。

自分んちへ入ってため息をついた。

「くそっ、なんて女だ。俺の方が狂うところだった。兄貴は平気なのだろうか?魂まで吸い取られそうなキスだったぜ。」

俺はベッドに横になった。

頭から離れなかった、莉花の唇が。

俺は莉花にメールした。『莉花、なぜ俺にキスされたがる?三度目にキスした時に答えがわかるかもしれない。貴弘』

遅かれ早かれ兄貴にバレるに決まっている。

その答えが見つからない限り、俺は莉花にキスすることになる。

返信が来た。『貴弘、おまえに三度目はないと思え。貴明』

「とうとうバレたか。」俺は返ってホッとした。

これであの女にもう狂わされなくて済む。

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