Secret Rose
彼岸花
母が東京へ行って一週間がたつ頃、母からメールが来た。
内容は、私が母との約束を守っているのか、ということだった。
約束とは―――
・花の水やりは毎日欠かさない
・裕吾以外の男を家に上げない
・食事はちゃんと作って食べる
の3つだった。
裕吾の場合 仲は良いが、頻繁に会っているわけではないし、彼氏もいないので約束を破ることはまずない。
料理は嫌いじゃないので、今のところ守れている。
水やりは…1日や2日やらなくても、すぐ枯れるということもないと思い、とりあえず気づいたときにやるようにしている。今日は帰ったらやることにしよう。

最近は日没が早くなってきた。もう9月も下旬、秋分の日も近い。
線路際や河川敷では 彼岸花も終わりかけ、山はもう既に紅く染まり、哀愁をも漂わせている。

今日は久しぶりに買い物に行こうと思い、中学から仲の良い友達 絵里奈を誘って街まで歩いた。
絵里奈は“親友”というよりは、同い年の“姉妹”という感じ。
お互い別に、親友だとかは意識していない。親友なんて、照れくさい。

絵里奈と街に行く時は毎回、カフェ、ショップ、雑貨屋、古着屋、カフェ と同じルートを通って回る。特に欲しいものがないときも、といあえず新しく入荷されたものはないか、と入るだけ入ってみる。

2人で決めたことではないが、いつの間にかそんなことがあたりまえになっていた。
しかし、今日はCDを買いに行こう、とルートを変更し脇道を抜けCDショップに向かった。
脇道を入ると、賑やかな大通りから隠れるように小ぢんまりした料亭が店を構えている。料亭の敷地にある枝垂れもみじは もう見ごろで、この時期になれば 母と食事行くのが毎年恒例になっていた。
母が帰ってくるまでは散らないで欲しいなぁ・・・。少し遠くから まだ点燈されていない看板を眺めながら そんなことを思っていると、料亭の垣根の間から見覚えのあるような男性が、料亭の女将さんに見送られ 出てくるのが見えた。
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