Secret Rose
1年の時の担任は綺麗な女性で、校則にはほどほど厳しく 第一、第二印象くらいまではキツそうなイメージだったが、私が花をいけていると『いつもありがとうね』といいながら口に人差し指を当て、 たまにお菓子をくれたりしていた。

しかし、2学期が始まってすぐ 産休ということで 新しい担任が私のクラスを受け持つことになった。

新しい担任は、年度始めに別の学校から赴任してきたばかりの男性教師で、名前は≪中村 開(かい)≫。教職について3年目、こんなかたち(代行)ではあるが、始めてホームルームを受け持つことになった。他の教師たちに比べると若く、ちょっと頼りないけど“話のわかる先生”として生徒からよく懐かれていた。

それから 担任の引継ぎも済み、クラスも段々と落ち着いてきたある日の朝のこと。
教室に花をいけるため早起きをし、学校へ向かって通学路を歩いていた。(花は好きだったが、 ひとりで花をいけるのはあまり 見られて嬉しいものではなかった。)

急に後方からクラクションを鳴らされ、一瞬ビックリした後 なぜ クラクションを鳴らされたのかわからず 無視して歩いていた。
通学路としていたこの道路は、裏道と呼ばれるくらいなので 他の国道や大通りに比べれば狭かったが、車が道の真ん中を通っても、左右に2人ずつくらいなら通れそうな余裕はあった。 にもかかわらずクラクションを鳴らされ、朝から気分が悪い。

それからその車は私と並走するようにゆっくり走り、助手席側の窓がゆっくり開いた。
もしかしたら 知り合いだったのかもしれない という焦りもあったが、心を落ち着かせ チラッと車高の低い車の中を覗いた。あまりはっきりは見えなかったが、見たことのあるような、背広を着た男が運転していた。

一生懸命 今見た曖昧な顔を思い出し、親戚や先輩を思い出そうとしたが、マッチする顔は思い浮かばなかった。 高校では特定の子としか付き合いはないが 中学時代の先輩や、その先輩の友達など 顔見知り程度の付き合いは多かった。
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