Secret Rose

紫陽花

次の日、父は朝からどこかへ出かけていて、顔を合わせないまま私は学校に行った。
シトシトと雨が降っている。台風が近づいていて風は強いが、そんなに雨は降っていない。しかし帰りには土砂降りになり、傘なんかでは間に合わなそうだった。

茜は友達数人と、土砂降りがマシになるまで自習室に居た。
自習室とはいうものの、受験前やテスト前以外はほとんど、誰も使っている様子はなかったので、よく茜たちはたまり場として使っていた。

放課後というのは、不思議といつもより会話が弾む。
しかし、一人また一人と、親や彼氏の迎えで帰ってしまい、最後には茜独りになってしまった。
雨も止む気配がない。しかたなく母に電話してみたが、迎えに来るにはしばらく時間がかかりそうだ。
茜はそのまま自習室で待つことにした。
イヤフォンをして、ミュージックプレーヤーで音楽を聴いたり、携帯でゲームをしたり、一人っ子の茜にとって暇をつぶすことは、難しいことではない。