Secret Rose
虫垂炎で退院が先延ばしになってしまって、出席日数も、単位も足りなくなってしまった。


私何か悪いことしましたか?

私の言葉遣いが悪いから?

だから先祖の誰かが私をこらしめるために、事故に遭わせて、おまけに虫垂炎にまで・・・。

手術も2回受けました。

問題も、出来るだけ自分で、頑張って乗り越えてきたつもりです。

なんで・・・?なんでなん――――?


「でも、補習とか、追試とか、レポートとかでどうにか巻き返すことも出来なくもないから。退院したら、無理せんと、一緒に頑張ろや。な?気落とすな・・・」

ベッドの頭を起こして、真剣に聞いた・・・つもりでも右から左に流れていく。
思考回路が途絶えてしまっているみたいだった。

ショックが大きすぎて、言葉がでない。
代わりに、目から水が湧いてくる・・・。

「泣くなや・・・。俺が付いてるから・・・」

「先生・・・」

「なんや?ティッシュ取ろか?」

「こっち来て・・・」

茜は掛け布団をめくってベッドに手を置いた。

「え、ちょ・・・」

担任が戸惑うのは当然だ。しかし茜は

「いいから!ここ来て!!」

そういって凄むので、担任は迫力に押され、仕方なくベッドに腰掛けた。

「せんせ・・・うぇっ・・・」

茜は、今出せる精一杯の力で担任にしがみついた。

一所懸命息をするが、縫い目が痛んで上手く泣けない。

「茜、こんなとこ・・・他の人に見られたら(笑)」

「うっさい!黙ってて・・・」

「・・・辛かったな・・・」

担任は茜の小さい背中を優しくさすってやった。
呼吸が落ち着くまで、何十分も、何時間も。
でも、そんなこと、全く苦ではなかった。
担任は、茜のことがとても愛おしく、可愛く思えた。
もちろん、生徒として・・・としか言ってはいけない。
それ以上は決して言ってはいけない――――。
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