歪んだ愛しさ故に
「ほんとすげぇな。
みんなの驚き」
「ですよね。少し失礼なんですけど」
「まあ、無理もないけどな」
上沢さんと訪れた場所は、あまり会社の人が来ないと言う穴場的な場所。
確かにあたりを見渡しても、お昼時だというのに顔見知りの人は誰もいなかった。
「でも初めて見た。
化粧してんのは」
「……ああ…。そうですね」
眼鏡を外されることはしょっちゅうあった。
ヘアゴムをとかれることもしょっちゅうあった。
だけどそれは、
真面目に見繕っていた自分を解かれたときだったので、化粧まではしていなかったから。
「はっきり言って、俺も結構惚れ直してんだけど」
「……」
にこりと微笑むその顔は、どこまで本気で言っているのか分からない。
どうも本性を知ってからのこの人の笑顔は
全てが嘘くさく見える。