歪んだ愛しさ故に
多分、タイミング的に、中村さんの言葉も聞こえていただろう。
まあ、この人に聞かれたところでなんともない。
顔色を変えずに、もう一言断り文句を言ってやろうと思った。
だけど……
「…っ」
「じゃあ、そんな子に、気軽に声をかけないでくれる?」
突然引き寄せられた体。
そこは、上沢さんの胸の中だった。
上沢さんは、にっこりと微笑んでいるけど、その瞳は笑っていない。
じっと睨みつける瞳。
端正な顔立ちが迫力を増す。
中村さんはエレベーターから降りると、上沢さんの横を通り過ぎた。
「上沢さんも、趣味悪いっすね。
そいつ、外見だけ変わったところで、中身はつまんねぇ女じゃないっすか」
「じゃあ、中村は目と頭が悪いな。
こんなに面白くて、イイ女なんて、どこにもいないと思うけどな」
「……ちっ…」
中村さんは、それ以上何か言うことなく、さっさとオフィスを出て行ってしまった。