歪んだ愛しさ故に
「あれ?豊田さんはウーロン茶?」
「……はい。飲めないんで」
「そうなんだ」
こんなあたしにも、気さくに話しかけてくる上沢さんは、とことん完璧なんだな、と思い知らされるときで……。
こんなにもカッコいいのに
厭味ったらしさもなく、上から目線のようなものもない。
いわゆる、絵に描いた王子様みたいな感じで
女子が騒ぐのだって分からなくもなかった。
だけどあたしにとって
彼がどんなにカッコよかろうが関係なくて……。
そもそも、
恋愛とかそんな類なものは、あたしには一生無縁なものだ。
「豊田さん、メガネ曇ってるよ」
「……あ…そうですね」
あつあつのお鍋に手をつけているときに指摘された言葉。
言われて、小皿を顔から離し、メガネの曇りが晴れるのを待った。
そう。
あたしはいわゆる、メガネ女子。
髪も一本に束ね、メガネで素顔を隠し、化粧っ気も正直ない。
男子から見ても
完全に恋愛対象外の女である。