歪んだ愛しさ故に
9章 自分を変えた男
「お疲れー!」
「お疲れ様です」
金曜日、約束していた通り、玲子さんと飲みに行った。
ずっとお酒は飲めない、と一点張りしていた女が、
今、初っ端からビールを注文している。
「はぁ……おいしい……」
「でしょー?ここのビールはほんっとおいしいんだよ。
女子で生飲む人って、なかなかいないからさー。
豊田さんが、実はイケる口って知って嬉しかったよ」
「すみません……。今まで騙してて……」
「いいのいいの」
最初から、ジョッキの半分くらいまでお互いに飲み干していて、改めての謝罪も軽く手を振っているだけ。
玲子さんは目の前の枝豆をつまみながら、あたしの顔をまじまじと見た。
「な、なんですか……?」
「んー?ほんと綺麗な顔してんなーと思って」
「やめてくださいよ」
「だって本当のことじゃん。
でも気づいてたよ。豊田さんの素顔、絶対に美人だって」
「え……」
「メガネ越しでも伝わってたし。
だから何でそんな隠してんのかなー、って思ってた。
それがあえてのものだってのも、うすうす気づいてたし」
「……」
最初から、玲子さんにはバレていたらしい。
会社では完璧だと思っていたのに……。