歪んだ愛しさ故に
 
「彼がさっき話してた、あたしの付き合ってる人でね。
 山岸健太(ヤマギシ ケンタ)。琴音とタメだよ」

「そう、ですか……」

「琴音ちゃんちは、カナリヤ公園の近くでいいの?」

「はい。そこで降ろしていただければ……」

「ダメダメ。公園なんかで降ろしたら物騒すぎるから。
 家の前まで送るよ」

「や……」

「そうだよ、琴音。
 いくらすぐそこだって思っても、何が起こるか分からないんだからね」

「……」


正直、この人に家を知られることのほうが嫌だった。


もう過去のことなのに……
向こうはもしかしたら、あたしのことさえ覚えてないかもしれないのに……。


あたしの感情は
今にも爆発してしまいそうなほど怒りが滲み出ている。


「じゃあ、公園に着いたら誘導してね」

「……はい」


だけど玲子さんの手前。
何も悟られてはいけない。


あたしは頷くと、窓の外を眺めた。
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