歪んだ愛しさ故に
「わ…結構いいとこ住んでるんだねー、琴音……」
「え、あはは……。
ちょっと知り合いのツテで、安く住ませてもらってて……」
玲子さんが突っ込みたいのは分かる。
あたしが指定したマンションは、自分が住んでいるところじゃない。
上沢さんの住むマンションだったから……。
「それじゃあ、送ってくれてありがとうございました」
ぺこりとお辞儀をして、再び上げた頭。
その瞬間……
「……」
バックミラー越しに、健太と目が合った。
目元しか映らないのに
なぜかその瞳が微笑んでいるように感じた。
「失礼します」
ゾクリと悪寒を感じながらも、それを悟られないようにドアに手をかけて降りた。
「琴音、また飲みに行こうね」
「あ、はいっ」
「バイバイ」
開けられた窓から手を振る玲子さん。
無邪気に笑う彼女の後ろに
にやりと微笑む不気味な笑顔。
何かが……
再び崩れ落ちる予感がする……。