歪んだ愛しさ故に
 
《はい?》
「……豊田です」


すでに来ることに慣れたマンションの前。
自分でインターフォンで呼び出すのは初めてだった。

カメラのついたオートロックのマンションは、名前なんか言わなくても相手があたしだってすぐに分かる。


名乗ったあたしに返事はなく
自動ドアが勝手に開いた。




「めずらしいじゃん。お前から来るなんて」

「ごめん……。
 ちょっと、一人になりたくなくて」

「ふーん?」


突然来たあたしに、不思議に思いながらも受け入れてくれた上沢さん。

押しかけてきたくせに、目を合わせられなくて
彼の前を通り過ぎると、いつもの定位置に上着と鞄を置いた。



「琴音」

「え?……っ」



突然掴まれた腕。

引き寄せられたと同時に、あたしの体は上沢さんの胸の中にいた。
 
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