歪んだ愛しさ故に
 
「何かあった?」
「え?……な、んでですか……?」
「目が怯えてる」
「……」


自分でも気づかなかった。

普段通り、ふるまっているつもりだったから。


だけど知らずうちに
過去が頭の中を侵食していく気がする……。


「……」


上沢さんは、あたしの頬に手を添えて
ただじっと瞳を見つめた。


漆黒の瞳。
何人もの女の人を虜にしてきた視線。

そしていつの間にか……



あたしでさえも……。




「似てる」

「……え…?」




揺らぎ始めた上沢さんの瞳。

真っ直ぐだったその瞳が、遠いどこかを見ている気がした。
 
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