歪んだ愛しさ故に
 
苦しそうだけど優しくて…
優しい微笑みだけど苦痛にゆがんでて……


ああ、この人をこんなふうに振り回せる人が、この世界にいたんだ……。


そう思うと、なぜかあたしの胸が苦しくなった。



「散々傷つけて、失ってから気づいたんだけどな。
 だから報われずに終わったけど……」

「……」


ははっ、と乾いた笑いも漏らす。

だけどあたしにとっては笑えない。



「あの時は気づかなかった……。
 あいつがどんなに歪んだ顔をしたって、それが俺の快感になってた最低男だったから……。

 でも今はなんか……



 すげぇムカつく」



「え―――っ」



言葉の真意がつかめないまま
あたしの唇にキスが落ちてくる。


目を閉じることも忘れ
ただじっと彼の顔を見つめていた。
 
< 138 / 287 >

この作品をシェア

pagetop