歪んだ愛しさ故に
髪を色気がないように適当に一本に縛るのも
目が悪くないのに、まじめに見える銀縁の眼鏡をかけるのも
年頃の女の子だというのに化粧をたいしてしないのも
全てあえてのことだった。
敵を作りたくないから。
目立ちたくないから。
この先ずっと勤める会社で
大人気ない嫌がらせを受けるなんて散々。
それなら最初から、誰も自分に興味を持たせない自分を作り上げた。
それが自分だった。
「ビール飲も」
さっき、散々お酒が飲めないと言いながら、
週末家でビールを飲むのは日課。
キッチンに向かって冷蔵庫を開けたけど……
「……うわ…」
冷蔵庫の中には、ビールどころか缶チューハイの一つすらない。
そういや、飲みきったんだっけ……。
ようやく自分がすでに最後の一本を飲んだことを思いだし、冷蔵庫を閉めた。