歪んだ愛しさ故に
にこりと微笑む顔。
八重歯が幼さを残し、無邪気な笑顔を演出する。
だけど心の内は、自分勝手の横暴男。
「何?玲子さんなら、まだオフィスにいるけど」
「用があるのは琴音だから」
「……やめて。あたしは二度と関わりたくない」
あたしの人生を狂わせた男。
もう二度と、声も顔も見たくない。
触られるのは尤もごめんだ。
「そんなこと言っていいの?
玲子に過去のこと、話すけど。
お前が、友達から男をとる最低な女だってこと」
「それはっ……!!」
健太が無理やりしたことだ!!
そう怒鳴り散らしてやりたかったけど、ここは多くの人が通る駅前。
どこかに会社の人もいるかもしれない。
嘘をつくのも
ほらをふくのも、こいつの得意技。
下手に逆らったら、またあの時のようなことが起こるかもしれない。
「……話すだけだからね」
「おう」
キッと睨みあげると、仕方なしにあたしたちは適当な居酒屋に入った。