歪んだ愛しさ故に
どれくらいの時間が経ったんだろう……。
ふと意識を取り戻すと
やっぱり部屋は暗くて……。
さっきまで一緒に寝ていたと思っていたはずの彼の姿は、どこにもなかった。
ゆっくりと体を起こすと
部屋はひんやりと冷気に包まれている。
ハタハタと揺らぐカーテン。
見ると窓は開いていて、そこから月明かりとともに綺麗な彼の背中が見えた。
タバコか……。
ほんのりと漂う煙草の香り。
かつてはあたしも吸っていた煙草。
真面目になると決めたとき、それらも捨てた。
だから今もこうやって煙草の香りを嗅ぐのは嫌いじゃない。
3月という季節は
少しだけ開いた窓で一瞬で部屋を冷気に包ませるほどで
「寒い」と一言言ってやろうと、毛布をくるみながらベッドから立ち上がった。
だけどそのとき気づいた。
「ああ。ちょっと聞きたいことがあって」
彼が誰かに電話をしていることに……。