歪んだ愛しさ故に
 
邪魔をしたら悪いと思って、文句を言うのはやめて
窓だけ閉めてやろうとそっと近づいた。


上沢さんはまだあたしが起きていることに気づいていない。
気づかれなかったらそれはそれでいい、という思いで窓に手をかけた。



「葵の連絡先、知ってる?」



その言葉に、思わず動きが止まった。


葵……?

男なのか、女のか微妙なところの名前。

気になって、そのまま聞き耳を立ててしまう。




「教えてくれ。

 会いたいんだ……。彼女に」





そう言った瞬間、
胸の中で何かが弾けた気がした。

 
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