歪んだ愛しさ故に
 
「腕いてぇ……」


グンと上に伸ばし、あたしの頭の下にあった右腕を左手で揉んでいる。

普通、それを隣の女の子の前で言うもの?


「だから腕枕はしないでいいって言ったじゃないですか。
 いつの間にしてきたんですか」

「んー?……あー……寝ぼけて?」


ためしで聞いてみたら、とぼけるように首をかしげる。

でも本当に、
どうして昨晩はあんな愛おしそうにあたしを抱きしめたんだろう……。

彼の心の中には、別の女性がいるのに……。


「もうすぐお昼ですよ。
 あたし、そろそろ帰ります」

「……なんで?」


いくら土曜日だと言っても、こんな時間まで寝てるなんて時間がもったいない。
しかも人の家だし……。

そう思っているのに、なぜか後ろから、ワントーン下げた上沢さんの声が聞こえた。


「なんでって……」
「今日何か予定あるの?」
「ないですけど……」
「じゃあ、いいじゃん」
「ちょっ……」


起き上がったあたしを、再びベッドに引きずり込ませて
またがるようにあたしを見下ろしている。
 
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