歪んだ愛しさ故に
 
「どっか行きたいとことかあんの?」
「行きたいとこ、ですか……」


そう言われても、ハッキリ言ってよく分からない。

デートらしいデートだって、もう何年もしていない。
友達とですら、一緒にお出かけということをしてこなかったのに……。


でも一つだけ挙げるとするなら……



「………高いところ…」

「え?」

「見下ろせるような……高いところに上がりたいです」



なんとなく浮かんだ、一つの案。


とくに思い入れなんかないけど、どこか思いきり高い場所に上がって世界を見下ろしたかった。


そして知りたかったんだ。

自分のちっぽけな存在を。
 
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