歪んだ愛しさ故に
 
繋いだ手は、外の冷気とは正反対の温かい温もりで……。
拓はきゅっとあたしの手を握ると、それを自分の上着の中へとしまった。


「すげー恥ずかしいんだけど」
「じゃあ、なんでこんなことするの?」
「一応、カレカノだから」
「……」


その答えに、納得するべきかどうかも分からなかった。


確かに、世間一般的な恋人同士は、デート中に手を繋ぐことも多いけど
きっとそれは、お互いがくっついていたいという意思の表れ。

もっと自分を好きになってもらいたい。自分の気持ちをこの手から伝えたい。

その意味が含まれているから……。


けどあたしたちの間に、それが必要かどうかと言ったら必要はなくて……。


でも……


手を繋ぐ以上の行為を、何度もしてきたはずなのに
あたしの心臓は忙しなく動く。

コートにしまわれたポケットの中だけが
一気に常夏になってしまったかのように熱を帯びて……



「恥ずかしいですね……」

「でも離してやんない」



彼の言葉は、あたしの心をより一層掴んでいった。
 
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