歪んだ愛しさ故に
 
「どう?」
「いいんじゃない?」
「適当?!」
「そんなことないですよ」


適当にショップを見て回って、拓のかぶるニット帽に一言。

身に着けて見せてくるものは、正直何を付けてもカッコいい。
だから決して、適当に返事をしているわけじゃない。


「ま、いいや。
 今日は自分のを買うつもりないし」

「女子みたいですね」

「うるせーよ」


あたしの突っ込みに、笑って返す拓。


思えば、いつからこんなふうな自然の笑みを向けてくれるようになったんだろう……。


「琴音」
「な……」
「いいじゃん」


勝手にかぶせてきた、白のロシアン帽子。

そしてあたしを見て、拓は満足そうに笑った。


「琴音は肌が白いから、やっぱり白が似合うな」
「……」


こんな言葉、決して特別なんかじゃない。
昔のあたしなら、よく言われていた言葉。


それなのに、あたしの頭は
褒め慣れていない子のように返事の切り替えしを思いつけない。
 

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