歪んだ愛しさ故に
「こっち来て。それ買おう」
「え、いいですよ。
帽子買う予定なんかなかったし」
「いいから。俺が買うの」
「え?」
どうしていきなりそうなったんだろう。
拓はあたしの頭から帽子を取ると、それをさっさとレジへともっていってしまう。
そして「そのままかぶっていく」という旨を店員に伝えて、タグを切ってもらっていた。
「ほら」
「っ……」
再びかぶせられた帽子。
ふわふわの毛が、耳まで覆っていく。
「可愛いじゃん」
「……」
拓はずるい。
拓はやっぱりひどい。
一度好きだと気づいてしまったあたしの心を
取り返しがつかないほど、どんどんともっていく。
「……あとで、代金払えって言っても払いませんよ」
「言わねぇよ!」
それなのにあたしの口は
とことん天邪鬼だ。