歪んだ愛しさ故に
「ほんとだ。結構イケる」
唇に、ほんの少しだけミートソースを残して、微笑を浮かべる拓。
そんな姿すら、絵になってしまうなんて、神様も不公平な世の中にしたものだ。
「俺のも食べる?」
「……いい。同じことさせられそうだから」
「よく分かってんじゃん。……ほら」
「え、だからいいって……」
「早く食え」
強引にもほどがある。
拓が選んだのは、ボンゴレ・ロッソ。
ご丁寧に、ホークの先にはアサリが突き刺さっている。
これこそ、無視していたらいつまでも差し出してそうだ。
意を決して、口を開け、目の前のパスタを頬張った。
「……どう?」
「……うん…おいしい」
口に広がる、アサリの香り。
同じミート系だけど、ボンゴレとボロネーゼではやっぱり全然違った。
「ついてる」
「あ……」
拓と同じように、唇の頬にミートソースを残してしまったようで、それに気づいた拓が人差し指でそれをぬぐった。
そして当たり前のように、それを自分の口元へもっていってしまう。
いつの間にか、さっきまでついていた拓の口元のミートソースはなくなっていた。