歪んだ愛しさ故に
「日中、こんなデートスポットに行ったのも……。
女に帽子なんかプレゼントするのも……。飯を食べさせ合ったりするのも……。
こうやって、リクエストに応えて観覧車に乗せるのも」
グングンと高くなっていく。
それと同時に、ドキドキと鼓動も速まっていく。
「女に不自由したことねぇけどさ……。
こういったことは、ほんと初心者だから」
苦笑した拓の顔は、何かを悔やんでいる顔で……。
ああ……。
きっと今、拓の心の中には、あの葵さんがいるのかな……。
そう思った。
「………これ……気に入りましたよ」
自然と湧き上がってきた涙を悟られまいと、わざとかぶっている帽子に触れて、
腕で顔を隠すように言葉を発した。
拓から初めてプレゼントされた、白いロシアン帽。
この帽子が流行るころには、すでにオシャレというものから遠ざかっていたから、あたしには無縁のアイテムだと思ってた。
だけど可愛い、と思っていたのは確かで……。
「ありがとう」
涙が引っ込んだ後、
拓の顔を見上げて笑顔でお礼を言った。