歪んだ愛しさ故に
14章 温かい腕
 
ひんやりと感じていた床の感触は
ふわりとまだ温かみを残したままの拓のコートに包まれて
その瞬間、急激に感情が高ぶってきた。


感じる恐怖。
今自分の身に起こっていたこと。


カタカタと体が震え、
あたしを包み込む拓の腕にしがみついた。


「……ってて…」


ようやく体を起こした健太から、悲痛の声。

それにピクリと反応した拓は、顔だけ傾け彼を睨みあげる。



「死にたくなかったら、今すぐこの場から消えろ」



それは、殺意のこもった低い声。

整った顔が、さらにその迫力を増させて
身長も高い拓が言うには、説得力がありすぎた。


「……っ」


健太は何か言い返したそうなそぶりを一瞬見せたけど
拓の剣幕に負けたのか、そのまま何も言わずに出て行った。
 
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