歪んだ愛しさ故に
あたしは拓に何か言われると困るからと、そっと会社を退社した。
それが拓を慌てさせ、今こうやって追いかけてくれるという結果に導いた。
でもそれは……
なんとなく分かっていたのかもしれない。
いや、分かっていたんじゃない。
信じてた、と言ったほうが近い。
どこかで拓があたしを見ていてくれたと、そう思いたかったから、あたしは部屋の鍵を閉めなかった。
拓があたしを訪れてくれたとき、なんの抵抗もないし部屋に上がってこれるよう……。
そうしてくれたらと、願っていた。
「どうしてこうなった?
なんであの男を部屋にあげたんだ」
心配の中に、怒りが混じっている。
こうなってしまったのは、もちろんあたしにも非がある。
健太が襲ってくる可能性があると、十分に理解していたはずだから。
でも……
「写真……
どうにかしたくて……」
「写真?」
「撮られてたの……。
この前、無理やりキス…されたときの写真……。
それを玲子さんに見せる、って……」
「玲子?……って滝本に?なんで?」
「……玲子さんの彼氏が……あいつ、健太なの」
あたしの言葉を聞いて、拓は大きく目を見開いていた。