歪んだ愛しさ故に
 
昨日、なんとなく聞いていた、玲子さんの彼氏の話。
その人が、あたしと拓に会いたいと言っていたこと。

まさかその時は、玲子さんの彼氏が、あたしの過去の恨んでいた人とは分かっていなかったから……。


「だけど途中から、こんな卑怯な男が玲子さんの彼氏であることのほうが許せなくて……。
 だから写真なんかどうでもいい、って怒鳴ったら、力づくで無理やり……っ」

「……分かったから」


またさっきのことを思い出して、カタカタと震えだす体。

それから守るかのように、拓がまたあたしを抱きしめた。


何年経っても消えないトラウマ。
健太だけは……きっとこの先も、自分の体に触れられることを強く拒絶するだろう。

 
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