歪んだ愛しさ故に
 
「……こんなに、怯えるものだったんだな……」

「え……?」


ふと聞こえた、頭の上からの声。

意味が分からなくて、顔を上げると、そこには苦しそうに顔を歪めた拓の顔があった。


「拓……?」


その顔が、あまりにも悲しくて、
思わずその頬にそっと触れた。


ピクッと動く眉。
揺らぐ瞳。

触れた手に、拓の手が重なった。
 
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