歪んだ愛しさ故に
 
「すげぇ……殺してやりてぇ……。
 琴音をこんだけ傷つけて……」


悲痛にまみれた顔。
その言葉は、ただ健太にたいしてだけじゃないような気がするのは、気のせいだろうか……。


だけどその真意には気づかないふりをして
ずっと強張っていた顔を無理やり緩めた。


「何それ……。
 また、自分のモノに手を出された独占欲?」


苦笑交じりの、無理やりな笑顔。


だって自分の言葉に、ひどく傷ついているから……。

決して、「好き」とか「愛」というものから無縁の関係。

ただこの人は、人一倍に嫉妬や独占欲が強く
気に入った玩具に手を出されたことへの怒り。


拓はその言葉に目を細めると、ドサッとあたしをその場で押し倒した。




「そう。

 お前は俺にとって、大事な……大切な女だから」



「え―――――」




その言葉の真意を確かめることは許されず
聞き返そうとした唇は、拓の唇によって塞がれた。
 
< 219 / 287 >

この作品をシェア

pagetop