歪んだ愛しさ故に
「れ、玲子っ!?」
「玲子…さん……」
そこにいたのは、会社に戻ったと思っていたはずの玲子さん。
にっこりと微笑んで、あたしの顔を見つめている。
「ごめんね。会社に戻るってのは嘘なの」
「え……?」
「今日のことは、全部あたしが仕組んだこと。
写真。知ってたよ」
予想外すぎる言葉に、あたしも健太も目が点になった。
玲子さんがこの写真のことを知っていた?
でも玲子さんは、あたしにたいしての態度は何も変わってない。
「健太の態度がおかしいって思ってたのは本当だからね。
悪いと思ったけど、つい携帯を見ちゃったの。そしたらその写真が出てきてさ……」
「な……」
「え?って思ったけど、よく見ると、明らかに琴音のほうの合意なしのキスじゃん?
だから絶対に何かあるなぁ…って思って、二人きりにさせれば何かしら分かると思ったんだ。
そしたら……そういうこと、だったのねぇ……」
微笑んでいた顔が、一気に消える。
健太のほうへ歩み寄り、その写真が入っている携帯を取り上げた。
「こんなことしてくだらない。
バイバイ。健太」
ちゃぽん、と静かな音を立てて、
携帯はビールジョッキの中へと沈んでいった。