歪んだ愛しさ故に
16章 伝えたい
「あははっ……見た?健太のあの顔っ!?」
飲み屋から出て、駅のロータリーまで走ってきたあたしと玲子さん。
息を切らしながら、玲子さんは大笑いをしている。
結局あのあと、
(じゃ、会計もよろしく)
なんて捨て台詞を添えて、玲子さんはあたしの手首を掴んでお店を出た。
健太だけが、ぽつんと一人取り残されて、目を見開いたまま追いかけることすらも出来なかったらしい。
「あー面白いっ。久々にこんな笑ったわ」
「……あの……」
目の前でお腹を抱えて笑っている玲子さんに、あたしも一緒に笑っていいものなのかも分からず、ただうろたえていた。
そんなあたしに気づくと、玲子さんは笑うのをひとまず止めて……
「ごめんね、琴音。
変なことに巻き込ませちゃって」
と、なぜか謝ってきた。
「そんな……。玲子さんが謝ることなんか……」
「あたしのことで、弱み握られて、健太に従ってたんでしょ?
おおまか、言うこと聞かないと、この写真を玲子に見せる、なんて言われて」
「えと……は、い……」
「やっぱり」
ここまで来たら、隠していても仕方がないと思って、素直にうなずいた。
玲子さんは呆れたように大きくため息をついている。