歪んだ愛しさ故に
「ねえ、琴音。
気づいたんなら、ちゃんと伝えなよ。
下手なプライドは後悔を生ませるだけだよ。
何も言わずに傷を作っていくんなら、何かをして一度弾けてこい!
そうしたら、また新しい自分を作って、次に進めるから。
あたしだってこう見えて、健太の携帯をビールジョッキに落とすの、結構勇気いったんだからね」
「玲子さん……」
最後の一言には、思わず思い出して笑ってしまって、
玲子さんも一緒に微笑んだ。
「震える手で何かをするのって、本当にすごく怖いこと。
だけどその分、自分が強くなれるから……。
だから琴音も頑張って。
あたしはもう、次に進めるよ」
「………はい」
玲子さんに言う言葉は、説得力があって、頷かずにはいられなかった。
あんな人に、本音をぶつけるのは怖い。
「好き」なんて言って「勘違いするな」と言われるんじゃないかって想像してしまう。
だけどいつまでも、こんな宙ぶらりんの状態を続けていたら
心も体も、どんどん傷をつくっていくだけだから……。
「……伝えてきます」
あたしは、彼に自分の想いを伝えることを決心した。